2013年05月24日

野蛮と文明と『セデック・バレ』と。

久々に映画のお話。
近頃いちばん面白かったのはいま上映中の台湾映画『セデック・バレ』。

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日本が台湾を統治していた1930年代に起こった
原住民セデック族の反乱「霧社事件」を映画化した作品です。
第一部・第二部と二部構成で全部あわせて4時間半! 4時間半!(大事なので2度)
めげる長さですが、いやこれは観る価値あります。
すでに評判も高く、多くの方がレビューをあげてますので細かくは書きませんが
森と精霊に寄り添い、戦いを心の糧として生きるセデック族の「野生」と、
台湾によかれと思って近代化をすすめた日本の「文明」が出会ったときに起きる
避けようのない衝突の物語です。
骨組みだけだと反日映画っぽくも感じますが、
見終わってそう感じる人はいないんじゃないかな。
確かに日本軍は横暴にも描かれますが、
対抗するセデック族って首狩り族ですからね。ばんばん人を殺すし首も狩ります。
4時間半かけて描かれるのは、まったく違う立場の2者のガチンコ対決。
大量に人が死ぬ悲惨な戦いですが、
「まあ、仕方ないや、、」と観ている方も納得してしまうとこまで
がっちりと物語を組み上げた監督はすばらしいなと思います。
よくこういう公平な視点と、ここまで構築するテンションが保てたなと。

んで、この映画をおすすめしたい理由のもうひとつは、
台湾の深山幽谷を駆け巡るセデックの人々の美しさ。イケメン祭りですよ奥さん!
特に主役のモーナ・ルダオを演じた若い大慶さん

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壮年パートを演じた林慶台さん

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二人とも原住民で素人だといいますが見事な存在感と目力にうっとり。
(「壮年モーナに睨まれて叱られたい」と鑑賞後友人に行ったら「それは遠慮します」と
きっぱり言われましたw)
ほかのセデック族も、演じたのは原住民から選ばれた素人がほとんどだそうで。
野生の塊のような運動能力と美麗な筋肉は見逃せませんよ!奥さん!
私としてはやんちゃなバワン少年に注目でしたよ!将来の伸びしろを感じましたよ!
久しぶりに日本のスクリーンにお目見えしたビビアン・スーも相変わらずのキュートさです。
プロデューサーにジョン・ウーが入り、アクションは韓国のチームが担当したそうで、
火力とアクションは圧倒される派手さです。
重たいテーマなのに、娯楽映画としても楽しめるのはこのアクションのすごさもあります。

というわけであっちこっちで宣伝しているワケですが、
東京は吉祥寺や渋谷での上映が31日までと聞きましたので
改めてご紹介したく。週末お時間ありそうな方はゼヒゼヒ!

この映画にぐっときたのは、同時期に読んだ
ディー・ブラウン『わが魂を聖地に埋めよ』のせいもあります。

文庫 わが魂を聖地に埋めよ 上 (草思社文庫) [文庫] / ディー・ブラウン (著); 鈴木主税 (翻訳); 草思社 (刊)

文庫 わが魂を聖地に埋めよ 下 (草思社文庫) [文庫] / ディー・ブラウン (著); 草思社 (刊)
アメリカインディアンたちの証言で綴る、アメリカの西部開拓史。
これまたすんごく重たい話です。
誇り高い狩猟民族だった彼らは、文字通り蹴散らされるように
先祖から受け継いできた土地を、開拓民たちに追い立てられ、
囲い込まれ、殺され、ついには絶滅寸前にまで追い込まれます。
酋長たちの言葉や写真がたくさん載っているんですが、
その言葉のひとつひとつがとても美しく素朴で心を打ちます。
その面構えやまっすぐな瞳も印象的。

セデックもインディアンも、オーストラリアのアボリジニも
美しい野蛮な人々でしたが、彼らが文明と出会ったときに
自分なりの生き方を貫こうとすればするほど追い込まれていきます。
ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 [単行本] / ジャレド ダイアモンド (著); 倉骨 彰 (翻訳); 草思社 (刊)

ニーアル・ファーガソンの『文明』

文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因 [単行本] / ニーアル・ファーガソン (著); 仙名紀 (翻訳); 勁草書房 (刊)


で描かれたように
(どっちも面白いですよ。文明論や文化人類学に興味あるかたにはおすすめ)
銃や鉄を持った人々が、持たざる人々を制圧していったのが今の社会なわけですが、
そろそろ、それはどんな行為だったのか、何をもたらしたのか、
それで人は幸せになったのか、、、そんなことを平たく考えてみる時代に
なってるのかなー、なんて、『セデック・バレ』のヒットを観て思ったりしました。

とまあ長々書きましたが、アクション映画好き&台湾好き&イケメン好き&民族文化好きの
どれかにあてはまる方、(私は全部なわけですが)半日費やす価値ありです☆

=おまけ=
観た方におすすめの動画(映画が面白かったといったらあっちこっちから情報がw)
音楽も素晴らしかったです。

●メイキング映像付き「看見彩虹」。観たあとだとぐっときます。
https://www.youtube.com/watch?v=12h0OIz9_EQ&feature=youtu.be

●ラストシーンに流れる「彩虹橋」の収録風景。おお、、、、
http://www.youtube.com/watch?v=qGB784wAQXY&feature=youtu.be

●モーナ親子の輪唱シーン、プライベートバージョン。いい声。
壮年モーナの林慶台さん、ふだんは牧師さんだそうで。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=5Fr8MMr-b5Q

●撮影の合間に、段取りを覚えたセデック族の子役たちが撮影ごっこしてて超かわいい。
出演(?)させられる若いセデック役者さんたちもノリノリ。
http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&v=MbcgxydU0t8&NR=1

●訓練の様子をまとめた動画。林慶台さんとバワン少年が最初から凄かったのが分かります。
http://www.youtube.com/user/TheARSFilm?feature=watch
posted by 山田静 at 23:21| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月06日

おおのきよみさんスケッチ展「Rainbow Taiwan」ギャラリートーク

今日は長年の友人、おおのきよみさんの旅のスケッチ展3
「Taiwan Sketchbook 彩虹臺灣 Rainbow Taiwan」へ。
(銀座月光荘にて、明日までです!)

ギャラリートークしてきました☆
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お客様もいっぱい、ありがとうございました。
椅子がなかった方、申し訳ないです。

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おおのさんと最初に会ったのは10年以上前です。
7ヶ月のアジア旅から帰国後、スケッチブックを片手に
当時私がいた『格安航空券ガイド』編集部を訪れてくれたのでした。
ちょうどそのときに『ハッピーシリーズ』を立ちあげるため
イラストレーターを探していた私は
おお! これだ!
とすぐに発注、1冊まるごとイラスト描いてもらいました。
みずみずしい色と生き生きとした線、何より本人が楽しそうに描いている姿が
とても新鮮だったのを覚えてます。
以来ずっと彼女の絵を見てきましたが、
素人考えながらどんどん研ぎすまされているように思います。
余分なものがそぎ落とされ、自分の目線の置き方に迷いが消えているというか。
台灣は彼女自身が長い付きあいの国なので、表現するときの自問自答を経て
いっそうそのエッセンスが明確に現われた気がします。
今日はそんな話や、スケッチするときの道具やかばん、色の選び方など
あれこれと改めて聞いてみました。面白かったなあ。

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箸袋。台灣好きな方なら周囲の香りも浮かんでくるかも。

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話題の「絵巻物」。

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たくさんの台灣の一瞬が切り取られています。
お茶で描いた絵にはみなさん興味しんしんのようでした。

というわけで、楽しい午後でした。いらしていただいた方、ありがとうございます。
大好きなイラストレーターのみんなも揃って、
思いがけずな人との再会やら、わざわざ足を運んでくれた友人知人の皆さんやら。
人の個展に便乗して楽しませていただいた半日でした。

明日まで銀座月光荘で開催されています。
台灣好きな方、旅のスケッチに興味がある方は行ってみてください。
11月には台灣でも個展が開催されますよ。
posted by 山田静 at 18:41| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月11日

フィジカルなフランスの闘病映画『わたしたちの宣戦布告』

レビュー記事連載をしていることもあり、
ときどき試写会にお邪魔しますが、今回は媒体で紹介しきれなかった1本を。
フランス(出てくるのはパリとマルセイユ)好きにもおすすめなのでご紹介しますね。

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『わたしたちの宣戦布告』
(2011/フランス/ヴァレリー・ドンゼッリ監督・主演)
9/15よりBunkamuraル・シネマ、シネリーブル梅田ほかで公開)

簡単にいうと子供の難病ものです。
「うわあ…」
それだけで引く人、いますでしょう。ええ私も引くタイプです。
(可哀想で見てらんないとか、お涙ちょうだいを引っぱりすぎたりとか理由はその都度。
この手の話で過剰な演出が苦手、というのもあります)
しかしこれ、意外なほどの疾走感でポップな印象の映画なんですよ。

クラブで出会って恋に落ち、そのまま結婚したお気楽カップルのロミオとジュリエット。
息子のアダムが産まれて幸せだったのですが、ちょっと様子がおかしいのが気になり
病院に連れていくと、アダムがラブライド腫瘍という難病であることが発覚。
ふたりは回復の可能性が薄いこの病気と闘うことを決心し、
すべてをアダムに注ぐ生活をスタートさせるのですが--。

子供の難病話を日本ではこうは仕上げないだろうなあ、というのが
見終った最初の感想です。
とにかく主演2人がよく動く。走る、笑う、泣く、踊る…。
場面もスピーディで音楽も疾走感があって、フィジカルでリズミカルな映画です。
2人の周囲にいる家族や友人たちも、泣いたり怒ったりしながらもどこか突き抜けた感じ。
(アダムのママは、女性のパートナーと同居してるんですよ。これもフランスぽい)
なんかこう、フランス人ってやっぱり感情豊かで面白いなあと思いました。

ストーリーは実際に監督&主演男優が経験したことに基づいているそうです。
のんきな若造だったのに、意外と病気に善戦できてる自分に気がついて、
成長していくロミオとジュリエット。
宣戦布告は病気だけじゃなくて、いろんなものに対してなのだなと思います。

あと、パリの普段着の顔みたいなのもいいですよ。
街角の何気ない風景がやっぱりかっこいいです。旅好きにもおすすめ。

15日からなので、興味あるかたはドゾドゾ。泣かない難病映画です。

いやちょっと泣いたけど。

posted by 山田静 at 21:35| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする